私たち日本人の食卓では、”主食”といえばまず「白米」を思い浮かべる方が多いでしょう。
私も子供の頃から白いごはんを当たり前のように食べてきました。
同様に、白いパンやパスタ、うどんも日常的に親しまれています。
しかし、最近ではこれらの”白い炭水化物”が「健康に良くない」と言われ始めています。
毎日のように食べている主食が実は体に悪影響を及ぼしているなんてショックですよね。
一方で、精製されていない”茶色い炭水化物”は、健康に良いことが科学的に証明されています。
なぜ”白い炭水化物”は体に悪く、”茶色い炭水化物”は良いのでしょうか?
この記事では、両者の違いやおすすめの食べ方について、科学的な根拠を交えながらわかりやすく解説します!
”白い炭水化物”が体に良くないと言われている理由
”白い炭水化物”とは精製された穀物のことで、「白米」や「小麦粉製品(白パン、パスタ、うどん、ラーメンなど)」を指します。
なぜこれら”白い炭水化物”が健康に良くないとされているのでしょうか?
その理由を3つの観点から解説します。
1 動脈硬化の原因になる
”白い炭水化物”は、血糖値を急激に上げ、「脳梗塞」や「心筋梗塞」などの動脈硬化が原因となる病気を発症させるリスクを上げる可能性が、数多くの研究結果により指摘されています。
よく「炭水化物=糖質」と誤解されがちですが、実際には炭水化物とは「糖質」と「食物繊維」が合わさったもので、「糖質+食物繊維」という式が成り立ちます。
白い炭水化物”は精製によって、「食物繊維」が取り除かれ、ほぼ「糖質」のみとなった状態といえます。
そのため、”白い炭水化物”はやわらかく、食べやすいですが、その分消化・吸収が早くなり血糖値を急上昇させます。
動脈硬化のリスクが上がるというのは、血糖値が上がると血液がドロドロになり、血管壁に負担がかかるとされているからです。
【参考文献】
フラミンガム子孫コホートにおける食事性炭水化物と心血管疾患リスク要因|米国国立医学図書館
2006年に発表された、アメリカのマサチューセッツ州における2941人を対象にした長期的な研究によると、高GI(”白い炭水化物”などが該当)の食事が複数の心血管疾患のリスク因子と関連していることが示されています。
2 糖尿病のリスクを高める
血糖値が上がると、膵臓からインスリンが分泌されて血糖値を下げる力が働きます。
しかし、血糖値の急上昇は、インスリンの過剰分泌を招き、次に急激な血糖値の低下、いわゆる「血糖値スパイク」を引き起こします。
血糖値スパイクが頻繁に起こると、膵臓に負担がかかり、やがては膵臓からインスリンが正常に分泌されなくなる恐れがあります。
このように、膵臓が疲弊してインスリンの分泌量が低下していまう状態を「2型糖尿病」と言います。
食事の後にいつも眠くなったり、イライラしたりする人は、この「血糖値スパイク」が起こっている可能性があるので注意が必要です。
【参考文献】
白米の摂取と2型糖尿病のリスク:メタ分析と系統的レビュー|米国国立医学図書館
この研究は、白米の摂取と2型糖尿病のリスクの関連を調べたメタ分析(複数の独立した研究結果を統合して、全体的な傾向や効果を明らかにする統計的な手法)です。
合計35万2384人のデータを分析した結果、白米の摂取量が多いと、特にアジア人(中国人と日本人)において2型糖尿病のリスクが有意に増加し、1日1食分増えるごとにリスクが11%上昇することが示されました。
日本人男性と女性における米の摂取と2型糖尿病:日本保健所による前向き研究|米国国立医学図書館
この研究では、日本人の男性と女性を対象に、白米摂取と2型糖尿病リスクの関係が調査されました。
5年間の追跡の結果、女性では白米の摂取量が多いほど2型糖尿病のリスクが1.65倍高くなることがわかりました。
一方、男性では明確な関連性は見られませんでしたが、特に運動不足の男性でリスク増加の傾向が示されました。
この結果から、日本人の白米の摂取が2型糖尿病リスクに影響を与える可能性が示唆されています。
3 肥満のリスクを高める
「血糖値スパイク」は、眠気やイライラの他に空腹感を引き起こします。
そのため、実際には十分に食べているはずなのに、さらに食べてしまうといった過食につながります。
このように、”白い炭水化物”の食べ過ぎは、食欲のコントロールを困難にする恐れがあります。
さらに”白い炭水化物”は「エンプティーカロリー」とも呼ばれ、栄養価が低いにも関わらず、カロリーが高いという特徴があります。
これらの理由から”白い炭水化物”の食べ過ぎは肥満のリスクを高めてしまうといえます。
【関連記事】
“茶色い炭水化物”の種類と健康に良い理由
ダイエットや健康のため「糖質制限」がブームとなった時期がありました。
実際に現代人は、白米やパンやうどんといった”白い炭水化物”に甘いお菓子など「糖質」を摂取しすぎていると懸念されています。
しかし、「炭水化物」や「糖質」を摂取するのを制限しすぎてしまうと、強いストレスを感じたり、腸内環境が乱れたり、ダイエットの場合はリバウンドする可能性が高まったりなどデメリットが多くあります。
そこで鍵となるのが、今回紹介する”茶色い炭水化物”になります。
ここでは、”茶色い炭水化物”の種類や健康効果について解説します。
“茶色い炭水化物”の種類と構造
”茶色い炭水化物”とは、次のような精製されていない穀物になります。
- 玄米
- 全粒粉
- 大麦
- オート麦
- ライ麦
- キヌア
- 雑穀類
- 蕎麦粉
”茶色い炭水化物”の構造を「玄米」と「全粒粉」を例に説明します。
玄米は外側に「ぬか」があり、その中に「胚芽」と「胚乳」があります。
「白米」とはこのうち、「胚乳」の部分のことをいいます。
全粒粉は外側に「表皮」があり、その中に「胚芽」と「胚乳」があります。
「白い小麦」も同じく、「胚乳」の部分のことをいいます。
つまり、私たちが食べている白米や白い小麦とは「胚乳」の部分のみということになるんです。
“茶色い炭水化物”は健康に良いのはなぜ?
研究では”茶色い炭水化物”を日常的に食べることによって肥満や動脈硬化、糖尿病のリスクを軽減できることが分かっています。
では、なぜ”茶色い炭水化物”が健康に良いのか、詳しく解説します。
食物繊維が豊富
まず、”茶色い炭水化物”の大きな特徴は、食物繊維が豊富に含まれていることです。
玄米の「ぬか」や、全粒粉の「表皮」には、食物繊維が多く含まれています。
この食物繊維には、血糖値の急激な上昇を抑え、腸内環境を改善する効果があります。
また、満腹感を得やすくなり、食べ過ぎを防ぐ効果もあるんです。
結果として、動脈硬化が原因となる病気や糖尿病、肥満のリスクを減らす助けとなります。
栄養価が高い
”茶色い炭水化物”には食物繊維のほかに、「ビタミン」や「ミネラル」が豊富に含まれています。
例えば、玄米には「ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB6、葉酸など)」や「ビタミンE」といったビタミン、そして、「カリウム」や「マグネシウム」「リン」といった重要なミネラルが多く含まれています。
ビタミンB群は主に体内での栄養素の代謝を助け、エネルギーの生成を円滑にします。
特にビタミンB1は「疲労回復ビタミン」とよばれていて、糖質がエネルギーに変わるのを助けてくれる働きや食欲を調整する作用があり、炭水化物と一緒に摂取することが推奨されています。
また、ビタミンEには「抗酸化作用」があり細胞を酸化から守り「若返りビタミン」と呼ばれているほどです。
ミネラルのカリウムやマグネシウムには血圧を正常に保ったり、筋肉の機能をサポートする役割があります。
こうした栄養素が豊富に含まれているため、”茶色い炭水化物”を取り入れることは、病気のリスクを軽減し、健康維持に役立つと言えるのです。
【参考文献】
食事中の炭水化物の種類と摂取源と心血管疾患リスクの関連性:英国バイオバンク参加者の前向きコホート研究|BMCメディシン
2022年に発表された、11万497人を9年間ほど追跡した英国の大規模な研究によると、精製された穀物デンプン(”白い炭水化物”に相当)を全粒穀物デンプンに置き換えることで、心血管疾患のリスクが約6%低下することが示されました。
食物繊維の必要性と健康|e-ヘルスネット(厚生労働省)
食物繊維は便秘の予防をはじめとする整腸効果だけでなく、血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、多くの生理機能が明らかになっています。現在ではほとんどの日本人に不足している食品成分ですので、積極的に摂取することが勧められます。
”茶色い炭水化物”にデメリットはある?
ここまで解説したとおり、”茶色い炭水化物”には健康メリットが多いですが、いくつかのデメリットもあります。
デメリットについて4つの観点から解説します。
1 消化がしにくい
玄米や全粒粉などの”茶色い炭水化物”は精製された”白い炭水化物”に比べて消化に時間がかかるという特徴があります。
消化に時間がかかるというのは、血糖値の急上昇を防ぐという観点では、メリットと言えるのですが、消化器官が未発達な子供や、消化器官が弱い人、体調不良の人は消化不良を起こすことがあるので、食べるのを控えた方が良いです。
2 調理が難しい
玄米は吸水しにくく、浸水も含めると炊くのに7時間以上の時間が必要になります。
全粒粉も水は吸収しにくく、グルテンが少ないため形成しにくいです。
そのほか、十割蕎麦はつなぎがないので上手に茹でないとちぎれてしまうなど、”茶色い炭水化物”は調理に手間やコツが必要になることが多いです。
3 食感と味の問題
“茶色い炭水化物”は”白い炭水化物”と比べて、食感が固く感じられることがあります。
また、味も慣れていない人にとっては、おいしくないと感じられることがあります。
4 フィチン酸の吸収阻害について
玄米や全粒粉などの表皮やぬか、胚芽には「フィチン酸」という成分が含まれていて、この成分がカルシウムや亜鉛、鉄、マグネシウムといったミネラルと結合し、吸収を阻害してしまうという研究結果があります。
これについて様々な論文などを調べたところ、「フィチン酸がミネラルの吸収を阻害する」とうことは事実と判断できます。
しかし、玄米や全粒粉に含まれるフィチン酸により、人がミネラル不足になるという報告はなく、はっきりとお伝えすることはできませんが、懐疑的な専門家の意見が多いようです。
通常あまり気にする必要はないと考えられますが、特定の栄養素欠乏のリスクがある人や特殊な健康状態の人は、医療専門家に相談することが推奨されます。
【参考文献】
ラットにおけるカルシウム、マグネシウムおよび亜鉛吸収率に及ぼす脱フィチン酸大豆タンパク質の影響|J-Stage論文
ラットを使用した実験で、フィチン酸がマグネシウム、亜鉛の吸収を阻害する可能性が示唆されました。
実験内容は、フィチン酸を除去した大豆タンパク質を使用して、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)の吸収に与える影響を調査したものです。
ラットを対象にした10日間の試験で、フィチン酸を除去した大豆タンパク質(PFS)を摂取したグループは、通常の大豆タンパク質(SPI)を摂取したグループと比較して、MgとZnの吸収率が5~10%高まりました。
Caの吸収率もわずかに改善されましたが、有意ではありませんでした。
”茶色い炭水化物”を簡単に取り入れるおすすめの方法
健康に良いとされる”茶色い炭水化物”ですが、調理の手間などから習慣化が難しいと感じる方も多いのではないでしょうか?
ここでは、無理せず、手軽に取り入れることができるおすすめの方法をお伝えします!
1 玄米のパックご飯を食べる
”白い炭水化物”である「白米」の代わりに健康効果の高い「玄米」を取り入れることで、長期的な健康メリットが期待できます。
しかし、玄米は炊飯も含めて準備にに7時間以上かかるのでなかなか大変ですよね。
そんな方におすすめなのが、レンジで温めるだけで手軽に食べられる玄米のパックご飯です。
白米より少し値段が高いですが、毎食ではなく、1日1食や週に数回だけでも効果的です。
私はもともと白米を食べるのは週に3回程度だったので、玄米パックにしても手軽に続けられています。
そして、特におすすめは、「寝かせ玄米ごはんパック」という商品です。
お手軽なだけではなく、もちもちとしていて美味しいです。
”茶色い炭水化物”は美味しくないといったイメージを覆してくれます。ぜひお試しください!
2 全粒粉のパンを選ぶ
パンが好きな方は、普段のパンを全粒粉のものに変えるだけで、健康効果を高めることができます。
最近はスーパーやコンビニでも全粒粉のパンが手軽に手に入るようになりました。
ただし、「全粒粉入り」と書かれていても実際の含有量は商品によって異なります。
原材料をチェックして、全粒粉が上位に記載されているものを選ぶのがポイントです。
3 蕎麦を食べる
蕎麦は「茶色い炭水化物」の一つで、食物繊維が豊富で血糖値の上昇を抑える優れた主食です。
選ぶ際は、できるだけ蕎麦粉の割合が多い十割蕎麦や二八蕎麦を選ぶと良いでしょう。
価格は少し高めですが、香りや味が格別です。
調理時には表示を確認し、たっぷりのお湯で茹でると崩れにくくなります。
ぜひ、本格的な蕎麦の美味しさを楽しんでみてください。
まとめ
今回は”白い炭水化物”が「健康に良くない」と言われている理由と”茶色い炭水化物”が「健康に良い」とされている理由、そして”茶色い炭水化物”のデメリットや簡単に取り入れる方法について解説しました。
”白い炭水化物”は糖質が吸収されやすい分、血糖値を急激に上げてしまい、動脈硬化や糖尿病のリスクを高めてしまう可能性が研究で示されています。
一方で”茶色い炭水化物”には食物繊維が豊富に含まれていて、血糖値の上昇を抑え、ビタミン・ミネラルといった栄養素も摂取でき、体調を整える効果があります。
そのため、消化器官が弱い人でなければ、できるだけ主食を”茶色い炭水化物”に置き換えた方が長期的な健康メリットが期待できます。
ただし、白米や小麦粉製品など”白い炭水化物”はなんといっても「美味しい」のは間違いありません。
過剰に気にして我慢しすぎるのも精神衛生上良くないと思いますので、今回解説した情報を知っていただき、その上で、ご自分の生活に無理のない範囲で健康的な食事をしていただきたいと強く思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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