ベーコンやハムは健康にどこまで悪い?科学で見る正しい付き合い方

加工肉

「目玉焼きとベーコン」

と聞くと、定番の朝食が頭に浮かぶ方も多いでしょう。

カリカリのベーコンやジューシーなハム、パリッとしたソーセージ。

手軽で美味しく、冷蔵庫に常備している方も少なくないはずです。

でも、このお馴染みの食品たちが「健康に悪い」と言われているのをご存知の方も多いのではないでしょうか?

手軽で美味しいベーコンやソーセージを食べるのがリスクを伴うとなると食べるのが不安になりますよね。

「では、実際どれほど悪いのか?」と気になるところですが、情報はさまざまで、どれが本当に信頼できるものなのか判断がつきづらいと思います。

しかし、大規模な研究結果など信頼できる情報を整理すると、加工肉が健康に与える影響についてある程度わかってきます。

この記事では、加工肉の健康リスクについて、科学的に証明されている事実と、まだ完全には解明されていないことを整理してわかりやすく解説します。

そして、どのようにこれらの食品と付き合っていくべきか、日常の食生活に取り入れるためのアドバイスもお伝えしていきます。

目次

加工肉の健康リスクについて判明していること

まずは、加工肉の健康リスクについて、科学的に明らかになっている事実をお伝えします。
2024年11月現在、明らかになっている主なリスクは次の3つです。

  • 大腸がんのリスクを高める
  • 循環器疾患のリスクを高める
  • 糖尿病のリスクを高める

大腸がんのリスクを高める

大腸がん

ベーコンやハム、ソーセージなどの加工肉には発がん性があることが知られています。

大規模な研究により1日あたりの摂取量が50g増えるごとに大腸がんになるリスクが18%増加することが明らかになっています。

加工肉50gとは、ウインナーなら2〜3本、ハムなら3〜4枚にあたります。

世界保健機関(WHO)の専門組織である国際がん研究機関(IARC)が2015年に「加工肉には発がん性があり、赤い肉にはおそらく発がん性がある」と発表して大きく注目されました。

IARCは発がん性がある物質をそのエビデンスの強さによってグループ分けをしていて、ベーコンやハムなどの加工肉は最もエビデンスの高いグループ1に分類されました。

グループ1には他に「たばこ」や「アスベスト」などが分類されています。

グループ1(128種類)発がん性があるアルコール飲料、たばこ、
加工肉、アスベストなど
グループ2A(95種類)おそらく発がん性がある亜硝酸塩、非常に熱い飲み物、
赤い肉など
グループ2B(323種類)発がん性のおそれがあるアスパルテーム、漬け物、鉛、
わらびなど
グループ3(500種類)発がん性の評価ができないコーヒー、マテ茶など
IARCによる発がん性の分類(2023年12月時点)

この分類は10か国から22人の科学者を集め、800以上の研究から評価した結果になります。

ベーコンやハム、ソーセージなどの加工肉が大腸がんのリスクを高めることは、世界中の多くの研究結果からみて事実と判断して良いでしょう。

【参考文献】
赤肉および加工肉の摂取による発がん性|ランセット(医学雑誌)
2015 年 10 月、10 か国から 22 人の科学者がフランスのリヨンにある国際がん研究機関 (IARC) に集まり、赤肉と加工肉の摂取による発がん性を評価しました。参考文献に該当の記事が掲載されています。

国際がん研究機関(IARC)の概要とIARC発がん性分類について|農林水産省
IARCの発がん性分類について農林水産省による詳しい説明が掲載されています。

循環器疾患のリスクを高める

心臓病

加工肉の摂取は、心臓病や脳卒中などの循環器疾患のリスクも高めることが複数の大規模な研究から明らかになっています。

9つの論文を統合した約15万人分の研究結果によると、加工肉の摂取量が1日1食分増えるごとに、循環器疾患による死亡率が15%増加する結果となりました。

脳卒中について、他の5つの論文を統合した研究結果によると、加工肉の摂取量が1日50g増えるごとに脳卒中のリスクが50%増加する結果となりました。

このような報告から、加工肉の摂取が心臓病や脳卒中などの循環器疾患のリスクを上昇させることは科学的に確かなものと言えるでしょう。

【参考文献】
赤肉および加工肉の摂取と死亡率:前向きコホート研究の用量反応メタ分析|米国国立図書館
赤肉と加工肉の摂取による全死因死亡率、循環器疾患による死亡率、癌による死亡率を調査した約15万人分の研究結果です。

糖尿病のリスクを高める

腎臓

加工肉や赤い肉の摂取が、2型糖尿病のリスクを高めることがわかっています。

ケンブリッジ大学の研究グループは、31か国、196万6,444人分のデータを分析しました。

その結果、1日50gの加工肉を摂取すると、10年後までに2型糖尿病を発症するリスクが15%上昇することが示されました。

未加工の赤い肉よりも加工肉の方が糖尿病リスクが高いとされています。

ただし、糖尿病発症の原因には複数の要因が関与しているため、加工肉が直接的な要因であるかは断定できないという見方もあります。

【参考文献】
肉の摂取と2型糖尿病の発症:20か国31コホートにおける197万人の成人と10万件の発症例を対象とした個人参加者連合メタ分析|ランセット
このケンブリッチ大学の研究論文では、さまざまな種類の肉を食べることと2型糖尿病になるリスクの関係について、世界のデータを使って詳しく調べています。2型糖尿病は、主に体が血糖値を適切にコントロールできなくなる病気で、特に不健康な食生活が関係していると言われています。

赤肉・加工肉摂取で糖尿病リスク上昇か 新研究|CNN
上記の研究に対するCNNの記事です。(2024/08/24掲載)

加工肉の健康リスクについて、まだ解明されていないこと

ここでは、加工肉が健康に与える影響のうち、現在も研究が進行中の内容や、可能性として注目されているものについてお伝えします。

認知症リスクとの関連性

加工肉の過剰摂取が、認知機能の低下や認知症リスクの増加に関連している可能性が示唆されています。

これは、2024年にアルツハイマー病協会国際会議で発表された新しい研究結果に基づくもので、研究者たちは30年以上にわたり、13万人以上の男女の食事データを定期的に収集して解析しました。

しかし、認知症との関係についてはまだ確定されておらず、因果関係を明らかにするためのさらなる研究が求められています。

なお、認知症は循環器疾患と関連があることが分かっており、これが加工肉との関連の要因になり得るという専門家の見方もあります。

【関連記事】
加工赤肉の摂取で認知症リスクが14%上昇、ナッツ・豆類の摂取で20%低下 新研究|CNN
アルツハイマー病協会国際会議が2024年7月に発表した研究結果についての記事です。

加工肉の発がん性に関わる要因 「ニトロソアミン類」

加工肉に発がん性があることは、多くの研究で指摘されていますが、その要因については完全には解明されていません。

しかし、可能性が高い要因として、加工肉で生成される「ニトロソアミン類」が指摘されています。

世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、ニトロソアミン類の中でも“N-ニトロソジメチルアミン(NDMA)”と“N-ニトロソジエチルアミン(NDEA)”を「グループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)」に分類しています。

ニトロソアミン類は、アミンと亜硝酸塩や窒素酸化物が反応し、高温調理や発酵、熟成の過程で生成されることが知られています。

加工肉は多くの場合、アミンが生成される条件が揃っており、発色剤として亜硝酸ナトリウムが添加されているため、発がん性があるとされるニトロソアミン類の生成リスクが高いと考えられます。

しかし、このメカニズムや具体的な要因については、まだ研究が進められており、今後の調査によって新たな発見が期待されています。

加工肉にはなぜ亜硝酸ナトリウムが添加されているのか?

加工肉に発色剤として添加されることが多い亜硝酸ナトリウムは、ニトロソアミン類を生成し、発がんリスクを高めるとされています。

実際、亜硝酸ナトリウムは強い毒性を持ち、成人にとっての致死量は約2gとされています。

では、なぜこのように人体に危険な添加物を、あえて食品に加えるのでしょうか?

これには「見た目を良くする」という理由以外に、もう一つ重要な理由があります。

それは、ボツリヌス菌による食中毒を防ぐためです。

ボツリヌス菌

ボツリヌス菌は非常に低い確率ですが、肉類の瓶詰め、缶詰、真空パック食品において発生する可能性があり、強い毒性を持つ菌として知られ、時には人の命にかかわることもあります。

そのため、食中毒を防ぐために亜硝酸ナトリウムの使用が必要とされています。

なお、亜硝酸ナトリウムの使用量は厳しく規制されており、通常の摂取量では健康への影響は少ないと考えられています。

※最近では亜硝酸ナトリウムなどの発色剤が含まない製法でつくられた「無塩せき」の加工肉も販売されています。
賞味期限が短くなり、一般的な加工肉よりも高価ですが、選択肢の一つになると思います。

【参考文献】
ニトロソアミン類とは|農林水産省
ニトロソアミン類が食品中の有害化学物質として注目されるようになった背景や、食品中での生成経路、その毒性について農林水産省が説明している内容です。

加工肉が循環器疾患や糖尿病に与える影響の要因

加工肉が心臓病や脳卒中などの循環器疾患リスクを高める要因として、いくつかの可能性が指摘されています。
主な要因を以下に紹介します。

高い塩分量

加工肉には多くの塩分が含まれています。

塩分の過剰摂取は血圧を上昇させ、結果として心臓病や脳卒中といった循環器疾患のリスク要因となります。

また、高血圧は糖尿病のリスク因子でもあります。

飽和脂肪酸の多さ

加工肉には、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を上昇させる飽和脂肪酸が豊富に含まれています。

LDLコレステロールが高くなると動脈硬化のリスクが増し、これが循環器疾患の引き金となる可能性があります。

また、高いLDLコレステロールはインスリン抵抗性を高める(インスリンがうまく働かなくなる)要因となり、糖尿病のリスクも高めます。

高温調理による有害物質の生成

高温のベーコン

加工肉や赤肉を高温で調理すると、血管に炎症を引き起こす可能性がある「複素環式アミン(HCA)」という有害物質が生成されます。

HCAは体のインスリン抵抗性を高める可能性があり、血糖値が上がり、血管にも悪影響を及ぼします。

インスリン抵抗性が進行すると、糖尿病や循環器疾患のリスクが高まると考えられています。

加工肉のメリットと健康的に付き合うポイント

ここまで見てきたように、ベーコンやハム、ソーセージなどの加工肉には、発がん性の可能性や循環器疾患、糖尿病リスクがあることが研究で指摘されています。

そのため、加工肉は「健康に良くない食品」といえるでしょう。

では、私たちはカリッと焼いたベーコンやジューシーなソーセージを今後一切避けるべきなのでしょうか?

実はそうとも言い切れません。

ここからは、加工肉が持つメリットと、健康的に楽しむためのポイントについて解説します。

加工肉のメリット

ベーコンとソーセージ

ベーコンやハムは栄養的に見ると、たんぱく質やビタミンB群、鉄分、亜鉛などを豊富に含んでいます。

とはいえ、これらの栄養素は他の食品からも摂取できるため、加工肉を健康目的で摂る必要は少ないかもしれません。

しかし、健康面以外にも、加工肉にはいくつかのメリットがあります。

加工肉の魅力は、「保存性の高さ」「調理の手軽さ」、そして「独特の旨味と風味」です。

保存性の高さ

加工肉の保存期間は3〜4週間と比較的長く、生肉と比べて扱いやすい点が魅力です。

加工肉の歴史は古く、紀元前15世紀には中近東でソーセージが作られていた記録もあります。

加工肉は「長期保存のための知恵」として生まれた実用的な食品と言えるでしょう。

調理の手軽さ

加工肉にはそのまま食べられるものが多く、忙しいときや手軽に食事を用意したいときに便利です。

ベーコンやソーセージ、ハムなど種類も豊富で、料理の幅が広がるのも魅力です。

例えば、生ハムをサラダに添えるだけでおしゃれな一皿が簡単に完成します。

独特の旨味と風味

加工肉の特徴的な旨味や風味は、料理に深みを与えてくれます。

特にベーコンの燻製香は、カルボナーラなどの伝統料理にも欠かせない要素です。

少量でも料理のアクセントになり、食卓を豊かに彩ります。

加工肉は、使い方次第で生活を便利にし、料理を一層楽しませてくれる存在です。

加工肉を健康的に楽しむためのポイント

カルボナーラ

加工肉を健康的に楽しむポイントは、適度な頻度と量を守り、普段の食事では栄養バランスを意識することです。

ここまで記載したとおり、加工肉には健康へのリスクがあります。

しかし、その影響は毎日多量に摂取する場合の話です。

もし「ベーコンやソーセージを毎日食べている」という方であれば、食習慣を見直し食べる量や頻度を減らすことをおすすめします。
がんなどの病気のリスクを下げることが期待できます。

しかし、たまに加工肉を楽しむ程度であれば、それほど神経質になる必要はないと考えられます

加工肉による年間のがん死者数は約3万4000人と推定されていますが、喫煙によるがん死者数は約100万人、アルコールでは約60万人とされており、加工肉のリスクはこれらと比べて低いといえます。

また、国立がん研究センターが45歳から74歳の日本人の男女約8万人を対象に、赤肉や加工肉の摂取量と大腸がんの発生リスクについて調査しています。

その結果、女性で毎日赤肉を80グラム以上食べると結腸がんのリスクが上がることがわかりましたが、加工肉については、男女ともリスクとの関連は確認されませんでした。

このため、普段の食事での加工肉の摂取量であれば、大腸がんのリスクに大きな影響はない、もしくは影響は小さいと言えます。

例えば、日常の食事にアクセントを加えたい時や、特別な料理を楽しむ際にカリッと焼いたベーコンを加えるのは、健康に大きな影響を与えるわけではありません。

加工肉は嗜好品のひとつとして、たまに楽しむことを意識すれば、健康にも大きな影響がなく、食事を楽しむことができると思います。

特に、ベーコンやソーセージなどの香ばしい風味や旨味は料理に深みを与えるため、「美味しく味わう」ことで満足感も得られます。

【参考文献】
情報提供 赤肉・加工肉のがんリスクについて|国立がん研究センター
国立がん研究センターによる「日本人における赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスク」などについての情報提供です。


加工肉に発がん性があるとWHO|BBCニュース
引用:英国のがん研究機関「Cancer Research UK」はWHO報告について、赤肉や加工肉の摂取を一切止やめるのではなく量を減らせば十分で、ベーコン・サンドイッチをたまに食べるくらいはかまわないとしている。

まとめ

この記事では、健康に悪いとされるベーコンやハム、ソーセージなどの「加工肉」について、今わかっている情報や、まだ研究中の内容を整理してご紹介しました。

大規模な研究によると、加工肉の食べ過ぎは発がん性、循環器系疾患、糖尿病のリスクを高めることがわかっており、認知症のリスクについても懸念されています。

原因としては、発色剤の亜硝酸ナトリウムが発がん性物質ニトロソアミン類を作り出すこと、塩分や飽和脂肪酸が多いこと、高温調理で有害物質ができることなどが挙げられますが、詳しいところはまだ研究中です。

日常的に加工肉を食べることは健康リスクがあるため、普段の食習慣を見直し、「食べすぎかな?」と感じる方は、量や頻度を少し減らしてみるのも一つの方法です。

ただ、ベーコンやハム、ソーセージを少量たまに楽しむ分には、大きな問題はないでしょう。

例えば、特別な日の料理に取り入れたり、少し贅沢な商品を家族と楽しむなど、「ほどほど」を心がけると良いですね。

まずは正しい知識を身につけ、納得のいく食選びをしてみてください!

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