皆さんは普段の食生活で「魚」を習慣的に食べていますか?
魚は私たち日本人にとって馴染み深く、健康に良いという科学的根拠が多く示されている食品の一つです。
今回は魚の健康効果とその根拠、おすすめの食べ方や注意点などについて解説します。
魚の健康効果に関する研究結果
死亡率が下がる
魚の健康効果についての研究結果で、最もシンプルで重要なのが「魚の摂取量が多い人ほど死亡するリスクが低くなる」という事実です。
「魚の摂取と総死亡率」を調べることを目的に12の観察研究のデータ(67万人分)を統合した調査結果が2016年に発表されています。
この調査結果によると、魚を全く食べない人と比べ、1日あたり60gの魚を摂取することで総死亡率が約12%減少することが示されています。
【参考文献】
魚の消費と全原因死亡率:コホート研究のメタアナリシス|米国国立医学図書館
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25969396/
心血管疾患のリスクが下がる
魚を摂取することにより心血管疾患による死亡率が低下することがわかっています。
食事における魚の健康効果について、2006年までの複数の研究を統合した結果がハーバード大学の研究者により発表されています。
これによると、特にオメガ3脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)であるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれている魚を適度に(週2回程度)摂取することで心筋梗塞などの心血管疾患による死亡するリスクが36%低下することが明らかになっています。
オメガ3脂肪酸は人間の体でつくることができないため、食品から摂取する必要のある必須脂肪酸に指定されていて魚やその他の海産物に多く含まれています。
EPAは血液をサラサラに、DHAは脳を活性化してくれると言われています。
厚生労働省もオメガ3脂肪酸について「海産物(魚や甲殻類)を多く含む食事と心疾患に関する研究結果によると、週に一回以上海産物を食べる人は、極稀にしか食べないあるいは全く食べない人と比較して心疾患が原因で死亡する可能性が低いようです。」という情報発信をしています。
【参考文献】
魚の摂取量、汚染物質、人間の健康:リスクと利益を評価する|米国国立医学図書館
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17047219/
オメガ3脂肪酸について知っておくべき7つのこと|厚生労働省eJIM
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/communication/c03/05.html
乳がんのリスクが下がる
オメガ3脂肪酸の摂取により乳がんのリスクが下がることがわかっています。
21の観察研究を統合した結果(約120万人分)オメガ3脂肪酸の摂取が最も高いグループは最も低いグループと比較して、乳がんのリスクが14%低いことが報告されています。
オメガ3脂肪酸を1日0.1g摂取すると乳がんのリスクが5%下がるとも報告されています。
【参考文献】
魚と海洋n-3多価不飽和脂肪酸の摂取と乳がんのリスク:21の独立した前向きコホート研究からのデータのメタ分析|米国国立医学図書館
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23814120/
特に健康効果が高い魚
魚の中でも特に健康効果が高いのは、イワシ、サンマ、アジ、サバ、ブリなどの青魚です。
これらの魚はオメガ3脂肪酸であるEPA、DHAが豊富に含まれています。
マグロはEPA・DHAが豊富に含まれていて、さらに幸せホルモンと言われる「セロトニン」を増やす効果もあるとのことでおすすめです。特に脂が豊富なトロが良いです。
各食品のオメガ脂肪酸の含有量などを詳しく知りたい方は、文部科学省が公表している「日本食品標準成分表」の「脂肪酸成分表編」をご覧になってください。
【参考文献】
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年|文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
魚を簡単に食べる方法
これだけ健康効果について高いエビデンスのある”魚”ですが、調理が面倒でなかなか普段の食事に摂り入れられないという方は少なくないと思います。
いつも肉料理を主食としている方は、週に1〜2回でも魚料理に変えるだけで、長期的に見て高い健康効果を得られます。
魚料理はとても美味しいので、是非積極的に食生活に摂り入れてみて欲しいのですが、ここでは、特別な調理を必要とせずとも魚を簡単に摂取できるおすすめの食べ方を紹介します。
お刺身
生のお刺身は最も効率良くオメガ3脂肪酸を摂取できます。
実は魚を焼いたり、煮たり、揚げたりするとオメガ3脂肪酸の摂取量が20〜50%下がってしまうんです。
お刺身は調理もほとんど必要なく、食事に簡単に取り入れることができるのでおすすめです。
マグロやブリ、サンマなどの脂身には特に豊富にオメガ3脂肪酸が含まれています。
小魚
魚は加工品でも栄養価はあまり変わらないとされています。
干した小魚は様々な商品が売られていて、小さい小袋に分かれていたりして、手軽でおやつやおつまみとしても食べることができます。
いつもスナック菓子や甘いお菓子などをおやつで食べている人は、週に何日かでも小魚に変えてみるだけで健康効果が得られると思います。
アーモンドフィッシュの「OH!オサカーナ」は片口イワシで作られていますが、味の種類が豊富で、おやつやおつまみなど色々と楽しめておすすめです。
一緒に入っているアーモンドも健康効果が高いです。
缶詰
缶詰はすでに味付けがしてあり簡単に食事の1品として摂り入れることができます。
サンマやサバの缶詰にもオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。
普段魚をあまり食べていない方が食生活に摂り入れる簡単な方法だと思います。
ただし、塩分や食品添加物が多く含まれている製品は食べ過ぎに注意してください。
木の屋石巻水産の魚の缶詰はサバの味噌煮、アナゴの味噌煮、イワシの醤油漬け、マグロの大和煮など種類が豊富で、食品添加物が入っていないのでおすすめです。
食品配達
「魚料理を作りたいけど時間が取れない」
「新鮮で美味しい魚がなかなか買えない」
という方には、新鮮な魚が丁寧に処理された状態で自宅に届くサービスがおすすめです。
【サカナDIY 定期便】毎月旬の地魚料理キットを自宅にお届け!「サカナDIY」というサービスは普段スーパーでは買えないような新鮮な地魚が自宅に届き、簡単な調理をするだけで食べることができます。
「手軽に美味しい魚料理を家族で食べたい!」という方にはは特におすすめです。
デメリットや注意点はある?
健康効果について高いエビデンスのある魚ですが、デメリットはないのでしょうか?
ここでは、魚を食べることについての注意点などについて3つの観点から解説します。
1 食べ過ぎないこと
全ての食べ物に言えることですが、食べ過ぎには注意してください。
どんなに健康に良いと言われている食べ物でも食べ過ぎると悪影響があります。
オメガ3脂肪酸が体に良いことは研究で明らかになっていますが、あくまでも脂質のため、食べ過ぎるとカロリーの摂りすぎになってしまいます。
また、魚ばかり食べると他の食品からの栄養素が不足してしまうので、やはりバランスよく食べることが大切です。
2 水銀や汚染物質について
魚には食物連鎖の過程で水銀や汚染物質を含んでいる場合があると言われています。
結論から言うと、毎日過剰な量の魚介類を摂取していない限り、あまり気にする必要はないと考えられます。
魚に含まれる水銀について、厚生労働省は調査結果から「平均的な日本人の水銀摂取量は健康への影響が懸念されるようなレベルではありません。」と報告しています。
ただし、妊娠中の方については厚生労働省から注意事項が示されています。
内容については、「魚介類を通した水銀摂取が胎児に影響を与える可能性を懸念する報告」がされおり、「妊婦が注意すべき魚介類の種類と摂取量」が示されています。
例えば、「キンメダイやクロマグロ、メバチマグロなどは1回80gとして週に1回まで」、「キダイやマカジキなどは1回80gとして週に2回まで」とされています。
「魚介類を通した水銀摂取が胎児に影響を与える可能性」について、具体的には音を聞いた時の反応が1000分の1秒以下のレベルで遅れる程度であり、将来の生活に影響を及ぼすものではないとされています。
そのため、水銀の摂取を過度に気にしすぎて健康メリットの高い魚を全く摂取しないことは、デメリットの方が大きくなってしまうので、過剰に摂取することは気をつけながら食べるのが良いと判断できます。
また、ダイオキシンなどの汚染物質のリスクについても、魚を摂取することのメリットを上回らず、健康に大きな影響はないことが海外の研究で示されています。(先述:「魚の摂取量、汚染物質、人間の健康:リスクと利益を評価する」より)
【参考文献】
魚介類に含まれる水銀について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/
3 食中毒に注意!
魚介類を食べる上で気をつけなければならないのは「食中毒」です。
魚介類の食中毒として多いのが、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどに寄生する「アニサキス」によるものです。
魚が死亡して時間が経つとアニサキスは内臓から筋肉に移動します。
そのため、魚を購入する際は新鮮なものを選び、調理の際は目視で確認しましょう。
他に「腸炎ピブリオ」や「ヒスタミン」といった食中毒を防ぐために、魚介類は必ず冷蔵庫など低温で保存してください。
【参考資料】
アニサキスによる食中毒を予防しましょう|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html
まとめ
ここまでご覧いただき、心臓や血管などの病気や乳がんを予防する魚の健康効果についてご理解いただけたかと思います。
魚の健康効果については世界で多く研究されています。
魚の種類や調理法は豊富なので、季節によって旬のものを食べるなど、ぜひ楽しみながらバランスよく食生活に取り入れてみてください。
今後は、魚の美味しい調理法なども記事にしてみたいと思います。
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